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andropが、映画『ルームメイト』の主題歌として発表した新曲"Missing"。すでに予告編や劇場で聴いた人もいるだろう。心を許したルームメイトが、本当は恐ろしい「誰か」だったら......というサイコサスペンスの緊張感やダークさと共鳴するように、かけがえのないモノを失う悲しみを、andropがかつてない生々しさで爆発させる美しいバラードだ。
実はこの"Missing"は、映画をきっかけに書き下ろされた曲ではない。andropの活動初期に完成していたが、これまで演奏も収録もされてこなかった楽曲なのだ。この曲を聴いて、その成り立ちをバンドのソングライターである内澤崇仁の口から聞いた時、僕は初めて本当のandropに出会えたと思った――。大げさに思えるかもしれないが、"Missing"はandropの歴史をこれまでも密かに照らしていたゼロ地点である。彼らと僕らは、2013年の今、初めてその場所に立つことが出来た。これは、それほど大きな意味を持つ1曲なのだ。

"傷ついて傷ついて
人は皆大人になると言う
恋しくて恋しくて
ここには君の声はないのに
あああ
どうして伝わらないんだろう"

ここで歌われている痛みと悲しみは、一体誰に向けられたものだったのか。それは、活動初期にボイストレーナーとして、まだ未熟だった内澤を支えていた人物である。andropを結成してから歌を歌い始め、ヴォーカリストとしての在り方を模索していた内澤にとって、その突然の喪失は本当に大きなショックだった。andropの表現として、自分の歌と言葉が届けるべきメッセージは何なのか。それまでの自問自答や試行錯誤を一気に追い越すようにして、思わず書き上げられていたのが"Missing"である。かけがえのない誰かを亡くすことは、自分自身の一部も永遠に失ってしまうことだという、痛ましい実感。そして音楽だけがその経験から自分を前に進めるための鍵なのだという、覚悟。この美しく力強いバラードには、その両方が結晶のように合わさって鳴り響いている。それがあまりにも生々しく感じられたがゆえに、内澤はこの楽曲を封印してしまったのである。ここでandropの最新楽曲としてこれを彼らが表現することが出来たのは、バンドそのものが今、変化を迎えつつあるからだ。
前作シングル『Voice』にも明らかだったが、彼らは今、楽曲の聴き手やライヴの観客たちと、より生身で具体的なコミュニケーションを求めている。andropはこれまで、匿名的な表現を得意として独自のロック／ポップを切り開いてきた。その磨き抜かれた普遍主義の安全圏をあえてはみ出すようにして、彼らは今、バンドとしてもっとタフになろうとしている。その背景には、聴き手ひとりひとりへのより深い信頼があることは言うまでもない。11月から始まる全国ツアー「angstrom 0.6 pm」では、その新たなコミュニケーションが具現化された形で、andropから僕らの前に示されるはずだ。そういう意味では、今回のシングル『Missing』に収録されているもう1曲"Melody Line"も、今後のライヴですぐに大きな存在感を放つことになる、androp流のダンスロック最新形だ。ちなみにこちらの歌詞のテーマは「夢」。誰もが持っていたはずの夢のひとつひとつに、今もう一度向き合うためのメッセージが、否応なしに身体が踊りだすハイブリッドなトラックにちりばめられている。そして、すでに来年3月には、初のアリーナ単独公演となる、バンド史上もっとも大きな規模のワンマンライヴが、代々木第一体育館で予定されている。ここに辿り着くまでに、andropはどれほどの進化を見せてくれるのだろう。それが、他のどのバンドにも実現できない最高のものになる確信が、すでに僕の中にはある。ぜひ、これを読んだあなたも、一緒にそれを見守ってほしい。

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